毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

漫画 頭の中の抽象化

マンガの描き方―似顔絵から長編まで (知恵の森文庫)

手塚治虫氏はまえがきで以下の様に書いている。

あくまでも、この本は手ほどきである。この本1冊で、何百人か、何千人かの、今まで描いたこともなかった人たちが漫画をちょこっと描いてみる、それで目的が達せられる本である。(4ページ)

描きたいものを頭の中にスケッチ

 漫画を描くということは、ものを描き写す作業ではなく、自分の頭の中 に浮かんだイメージを描くのだということである。(中略)だれにでもこれはできるのです。ただし、多少の訓練を必要とする。映像的なものに慣れるのだ。字を覚えるように、見たものを覚えるのだ。

(たとえば)漢字を、文字としてではなく、すべて映像、つまり画像として頭にたたきこんだそうである。これはいうなれば頭の中でデッサンをしたのと同じだ。(中略)そのものをじーっと見つめて、その姿かたちを、なんとか頭の中で覚えてしまうように努力する。(25ページ)

見えない線=流線を描こう

この線は、もともと残像現象を簡略化したものから始まったので、別に風が吹いているわけではない。このほかにも約束ごとはいっぱいある。どういうわけか、この約束ごとは日本ばかりか、万国共通といっていい。つまり世界語に近い絵言葉というわけだ。(89ページ)

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漫画が表現できる情報量

夏目房之助氏の解説「手塚マンガと漢字のあやしい関係」も面白い。夏目氏は手塚氏は表情類型や記号的表現を体系化、漢字の様に誰もが使える様にしたと解説している。漫画家が本当は見えないものも含め見たものを抽象化したものが漫画であり、そこにたとえば流線の様な記号的表現を使う事で小説や映画にも劣らない非常に多くの情報量を詰め込めると認識した。

 

蛇足

手塚氏は一言で漫画とは?と問われて「風刺ですよ」と答えている。