毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

生命とは何か? 推理小説

シュレジンガーはオーストリア出身の物理学者。 1926年シュレーディンガー方程式を発表し「系のある性質が観測されれば、結果は量子化(離散的な値だけが現れる)される事があるとしている。」とし、量子物理学の前提となる波動方程式により貢献をした人、但し本人は「シュレジンガーの猫」を主張し、量子的な不確定性を否定していた。

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)  

本書はシュレジンガーが事実上引退していた1944年に行われた講演が下になっている。遺伝子の存在・その働きについて物理学の見地から「その暗号の縮図は、はなはだ複雑でしかも明細に指定された生長の設計図と一対一の対応を成しており、さらにこの設計を施行する手段を含んでいるはずだ。」(133ページ)と予測したもの。

 2008年岩波文庫版巻末には訳者、鎮目恭夫氏のあとがきが2本付されいる。鎮目氏によれば遺伝子の正体はDNAであるという分子遺伝学への基本路線(185ページ)という発見の切っ掛けになったとの事である。「21世紀前半の読者にとっての本書の意義」では鎮目氏は言語学者のチョムスキーフレームワーク(自己とは何か?、概念は日常言語に依存する、)などに言及している。本書では生命とは何かという今も問い続けられている命題に関して出版後60年にわたるストーリーを想像させ、分子生物学、量子物理学、認知科学などとの関連性を推理小説の謎解きの様に楽しめる。