毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

論理学

あなたは解のある問題に挑戦していますか?~『数学を使わない数学の講義』小室直樹氏(2005)

数学を使わない数学の講義 小室直樹氏は社会学者、数学を使った論理的思考とは?(2005) 太平洋は存在する バルボアなる男が、パナマ地峡で太平洋を(1513年に)発見してしまうのだ。つまり太平洋が紛れもなく存在することがもうわかってしまった。そして、…

数学は神と論争するための手段であった!~『数学嫌いな人のための数学―数学原論』小室直樹(2001)

数学嫌いな人のための数学―数学原論 小室直樹は経済学、社会学の研究家、数学が登場した歴史的背景は何だったか?(2001) 数学は論理学から始まった 近代数学はギリシャに始まった。ギリシャの優れた論理学と結びついたからである。ギリシャの論理学は、ア…

反知性主義とは、一言で言うと「夜郎自大」のこと~『知性とは何か』佐藤 優 氏(2015)

知性とは何か(祥伝社新書) 佐藤氏は作家、日本には「反知性主義」が蔓延している。政治エリートに反知性主義者がいると、日本の国益を損なう恐れがあると、著者は主張する。(2015) 反知性主義 筆者が言う反知性主義とは、実証性と客観性を軽視もしくは無視…

"知能指数"と"賢いこと"は一緒か?~『なぜ人類の知能は上がり続けているのか?』J・R・フリン氏(2015)と『アルジャーノンに花束を』D・キイス

なぜ人類のIQは上がり続けているのか? --人種、性別、老化と知能指数 フリン氏は道徳哲学、心理学の研究者、 20世紀を通じて人間の知能指数<IQ>は上昇を続けている――「フリン効果」の発見者が語る、現代人の知能の真実。 (2015) フリン効果 人類の知能…

重要なこと、全体から部分を見るという意識~『日本文化における時間と空間』加藤 周一(2007)

日本文化における時間と空間 加藤周一(1919-2008)は文芸評論家・作家、日本文化を貫く時間と空間に対する独特な感覚―著者はそれを「今=ここ」と捉える―に迫る。(2007) 日本文化の時間 始めなく終りない直線=歴史的時間、始めなく終りない円周上の循環=日常…

生命という"概念"がいつ生まれたか知っていますか?~『はじめて読むフーコー』中山 元(2004)

はじめて読むフーコー (新書) 中山氏はフーコーの研究家。ミシェル・フーコー(Michel Foucault)は一九二六年に生まれ、一九八四年に亡くなったフランスの思想家です。五七年ほどの生 涯をつうじてものを考えつづけたフーコーは、ぼくたちに大きな遺産を残…

物質とは何か?物質もまた相対的な概念であると気付く~『知の構築とその呪縛』大森壮蔵(1985)

知の構築とその呪縛 (ちくま学芸文庫) 大森壮蔵(1921-1997)は哲学者。16世紀に始まった科学革命は、「心」に帰属するものが排除され、自然と人間の分離、主観と客観の対立が生じることになった。 大森氏はガリレイの物質感を引用 わたし(ガリレイ)がある質料…

「今日は良い天気ですね!」の言語学的意味、気持ちよく活きる為に~『思考と行動における言語』 、今から75年前の古典より

思考と行動における言語 ハヤカワ氏(1906ー1992)は日系米国人の言語学者。一般意味論の最良の入門書として、刊行以来半世紀近く、広く読みつがれてきた古典的名著。翻訳第4版1985年(原著初版は1941年) 一般意味論 言語その他の記号における人間の反応の研究…

数式のxは誰がいつから使い始めたか?~数学記号の誕生

数学記号の誕生 xを使った方程式、今では当たり前の事。人類はここに到達するのに長い年月をかけてきた。17世紀以前、ニュートンの万有引力もまた記号を使わず、言葉と図表によって表現されていた事になる。2014年刊 未知数と既知数 今なら2次式をax^2+bx+…

我々は「好きな事に没頭する自由」を持っている、しかし覚悟が必要~1941年発刊「自由からの逃走」より

自由からの逃走 新版 ドイツ生まれの社会心理学者エーリッヒ・フロムによって1941年に発表された。フロムはヒトラーの全体主義に世界が震撼するその最中に、この作品を世に送り出した。 自己表現する事、それが世界につながる事 自由獲得の400年 中世末期以…

リバタリアニズム主義と「商い」の共通点~「自由はどこまで可能か」、法哲学の立場から

自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書) ロン・ポール氏の本からリバタリアニズムという主義を知り、本書を手に取る。 森村氏は法哲学の研究家、本書は2001年刊。 リバタリアニズム(libertarianism)とは リバタリアニズムは、個人的…

我々は過去に囚われ未来を想像できない存在である~不確実性下の意志決定論で確率的に証明済み

確率的発想法~数学を日常に活かす 小島氏は数理経済学の専攻、不確実性の存在下での意志決定論、1994年刊 エルスバーグのパラドックス(1961年) 数理経済学者のダニエル・エルスバーグは、1961年に発表した論文で、次のような実験結果を報告しました。まず…

「水」は存在しない只の虚構に過ぎない~40年前の名著「ことばと文化」に学ぶネーミングの重要性

ことばと文化 (岩波新書) 鈴木氏は言語社会学が専門、「 文化が違えばことばも異なり、その用法にも微妙な差がある。」本書初版は1973年!、私の手元には2013年第73版がある。間違いなく名著である。 H2Oを示す言葉 化学式ではH2Oで示すことのできる物質は、…

今更聞けない、「ニワトリが先か、卵が先か?」~弁証法のアプローチ

弁証法はどういう科学か (講談社現代新書) 本書は1968年初版発行、手元は第46版!(1994年) 精神が先か、物質が先か? ニワトリが先か、タマゴが先か? トリはタマゴを生むもの、タマゴからトリが生まれるもの、と一面的な真理を固定して形而上学的にとりあげる…

身体論の持つ意味とは?~分子生物学が物理と生命の垣根を取り払った現代において

身体論 東洋的心身論と現代 (講談社学術文庫)“心”と“身体”―デカルト以来の近代西洋哲学が幾度となく究明を試みたその問題は、東洋思想の照明を受けつつ、今日最もヴィヴィッドな課題として我々の前にあらわれている。 近代ヨーロッパのアプローチ 近代ヨーロ…

宇宙と哲学が交わる所~感情が発生する事が奇跡

14歳からの哲学 考えるための教科書 人生に意味はあるか? 人は、物質宇宙、星々が永遠に生成消滅を繰り返しているということに、意味や理由があるとはほとんど思わない。でも、それなら、地球という惑星になぜか存在し、生まれたり死んだりを繰り返している…

フェイスブックの「いいね!」を押しながら考えた「一般的他者の視点」~心理学・哲学のアプローチ

「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書) 山竹氏は哲学・心理学の研究家。本書は2011年の発刊。 当時の帯より、 「『空虚な承認ゲーム』をどう抜け出すか。その『答え』ならぬ『考え方』を教える本書は、規範喪失の時代における希望の書で…

幾何という字を何と読みますか、そしてその意味がわかりますか?~geometoryという概念と結合

幾何(いくばく)とは 「いくばく」は辞書では【幾何/幾許】1 数量・程度の不明・不定なことをいう語。どれほど。「―の利益を得たか」2 (「いくばくか」の形で)ある程度。若干。「旅費はまだ―か残っている」 幾何(いくばく)から幾何(きか)になった …

聖書の創世記に基づいて、世界の歴史は6,000年と想像してみる~現代のキリスト教を理解する為に

聖書男(バイブルマン) 現代NYで 「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記 髭をそってはならない、という戒律を守る! 旅の目的は究極の聖書的生活を送ること。より正確にいとう、聖書の教えにできるだけ忠実に活きること。十戒に従い、産んで増え、隣人…

我々の政治体制「議会制民主主義」は常に正しい、と思い込んでいないか?~民主主義は進化できる。

来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書) 國分氏はスピノザを研究する政治哲学者。 「2013年5月、東京都初の住民直接請求による住民投票が、小平市で行われた。結果は投票率が五〇%に達しなかったため不成立。半世紀も前に作…

不毛な論争に捕まらない為に~クラス理論を使って冷静になる

ラッセルのパラドクス―世界を読み換える哲学 (岩波新書 新赤版 (975)) 三浦氏は分析哲学の研究家、小説家。 本書は簡単なクイズから始める~どちらの文が真か? Aこの犬は吠える B犬は吠える Aは真でありBは真ではない 犬が普通名詞であることに注意しよう。…

有限と無限、どちらが大きいか?~鉛筆1本で証明してみる。

「走ることの最も遅いものですら最も速いものによって決して追い着かれないであろう。なぜなら、追うものは、追い着く以前に、逃げるものが走りはじめた点に着かなければならず、したがって、より遅いものは常にいくらかずつ先んじていなければならないから…

ギュゲスの指輪、又の名をドラえもんの「透明マント」を知っていますか~これで皆を幸せにする方法を考える。

100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか バジーニ氏はイギリスの哲学雑誌の編集者。「古代ギリシャの時代から哲学者たちは「思考実験」を“考えるためのシミュレーション・ツール”として用いてきました。」 ギュゲスの指輪(Wiki) ギュゲスの指輪の…

ギュゲスの指輪、又の名をドラえもんの「透明マント」を知っていますか~これで皆を幸せにする方法を考える。

100の思考実験: あなたはどこまで考えられるか バジーニ氏はイギリスの哲学雑誌の編集者。「古代ギリシャの時代から哲学者たちは「思考実験」を“考えるためのシミュレーション・ツール”として用いてきました。」 ギュゲスの指輪(Wiki) ギュゲスの指輪の…

我々は自由に欲望を決めていい~自由に決める時「常識」も「タブー」も一切関係ない、それが現代の意味

中学生からの哲学「超」入門―自分の意志を持つということ (ちくまプリマー新書) 竹田氏は哲学の研究家。「自分とは何か。なぜ宗教は生まれたのか。人を殺してはいけない理由は何か。何となく幸福じゃないと感じるのはなぜなのか…。」 自分の意志を持つ事 「…

我々は「曖昧な」日本語を使って、日常的に利他を追求できる~それには西洋と日本の二重性の世界を生きているという自覚が必要

日本語教のすすめ (新潮新書) 鈴木氏は社会言語学者、「日本語は英語に比べて未熟で非論理的な劣等言語である」―こんな自虐的な意見に耳を傾けてはいけない。」 日本語には西洋の言語に見られるように人称代名詞は数が多いどころか、むしろ存在しないと言う…

近代科学は「成り上がりのストーリー」の寄せ集めかもしれないという視点~いきづまった、と思った時に

近代科学と聖俗革命〈新版〉村上氏は科学史の研究家。本書の初版は1976年! 本書を以下の様に始める。 17世紀は偉大な世紀であった。今日我々が、自然科学という言葉で呼び慣わす知識体系の祖型はほとんど、この世紀に集中して形成された。 村上氏は世俗革命…

250年前のカントの考えた事~我々もまたその枠組みの中を生きている、リスボンの大地震を知っていますか?

今を生きるための「哲学的思考」 黒崎氏は哲学者。「本当の哲学は、今、そこに起こっていることについて、「本当にそうなのか?」と、自分で考えるためのものなのです。」 1755年ヨーロッパの覇権国ポルトガルの首都リスボンは地震により壊滅 1755年のリスボ…

世界一の投資家ジョージ・ソロス氏「私は間違っているかもしれない、」の持つ意味~より良く認識し行動する為に

ジョージ・ソロス(George Soros、1930年8月12日 - ) ハンガリー・ブダペスト生まれのハンガリー系およびユダヤ系アメリカ人の投機家・投資家・ヘッジファンドマネージャー。哲学者、慈善家、自由主義的な政治運動家でもある。自身を「国境なき政治家」と称…

パノプティコンという言葉を知っていますか?~そしてここから自由になる方法

監獄の誕生―監視と処罰フーコーはフランスの哲学者。監獄の歴史を通じ、現代の権力がどの様に成立しているかを論ずる。 フーコーによるパノプティコンの説明 ベンサムの考えついたパノプティコンはこうした組み合わせの建築学的な形象である。その原理はよく…