毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

政治・社会

浅田氏は、なぜ主人公は米国人青年にしたのか?~『わが心のジェニファー』浅田 次郎氏(2015)

わが心のジェニファー 浅田次郎が描く、米国人青年の日本発見の旅! 日本びいきの恋人、ジェニファーから、結婚を承諾する条件として日本へのひとり旅を命じられたアメリカ人青年のラリー。東京、京都、大阪、九州、北海道…。神秘のニッポンを知る旅を始めた…

株式会社とは”自己強化型ループ・システム”のことである~『世界はシステムで動く』ドネラ・H・メドウズ(2015)

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方 メドウズは1972年「成長の限界」の主筆、複雑なことを紐解く、物事を大局的にとらえる…ドネラ・メドウズが自身の思考法(=システム思考)を全公開。(2015) システムとは何か システムとは、…

全知全能神があなたを見ていると想像して、考えることは何か?~『宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰』ニコラス・ウェイド氏

宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰 ウェイド氏はサイエンスライター、原始社会において宗教はなぜ不可欠だったのか、信仰の本能はいかにして人間の本性に組み込まれたのか?(2011) 宗教とは 宗教とは、感情に働きかけ、人々を結束させる信念と…

東京は人口のブラックホール!?~『地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減』増田 寛也氏(2014)

地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書) 増田氏は官僚、岩手県知事を経験、若者が子育て環境の悪い東京圏へ移動し続けた結果、日本は人口減少社会に突入した。 多くの地方では、すでに高齢者すら減り始め、大都市では高齢者が激増してゆく。(201…

中国は”西洋文化圏”から新しいパラダイムを求めている?~『習近平の中国』宮本 雄二氏(2015)

習近平の中国 (新潮新書) 宮本氏は2006‐2010の駐中国大使、 猛烈な反腐敗闘争、戦後秩序を揺さぶる外交攻勢、急減速する経済の立て直し―。二〇一二年の総書記就任以来、習近平は猛烈なスピードで改革を進めている。(2015) 中国社会と日本社会 明治以来、日…

古代ローマに学ぶ、自由人と奴隷の違い~『奴隷のしつけ方』ジェリー・トナー氏(2015)

奴隷のしつけ方 解説のジェリー・トナー氏は英国の古典学の研究者、本書はファルクスという古代ローマの貴族が執筆する形式をとる。「古代の大帝国を支えた奴隷越しに 我々の生きる現代社会が見えてくる」(2015) ローマ帝国と奴隷 大土地所有者たちは、買…

ノーベル財団がノーベル賞に託すメッセージとは何か>~『日本にノーベル賞が来る理由』伊東 乾氏(2008)

日本にノーベル賞が来る理由 (朝日新書) 伊東氏は作曲家、指揮者、原爆、核開発からポスト冷戦後まで、パワーポリティクスを鮮やかに読み解き、日本の進むべき道を指し示す。世界の研究と開発を左右する、「最高権威」ノーベル財団の戦略とは。(2008) 湯川博…

あなたは自分でゲームを組み立てているか?~『サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台』平田竹男(2013)

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台 (新潮文庫) 平田氏は「トップスポーツビジネス」の研究家、自ら関わった数多くの日本代表戦のマッチメイクを振り返り、ピッチ外で火花を散らすもう一つの戦い=「外交交渉」の真実を、通産省出身のサッカ…

ディストピアの意味を知っていますか?~『この国。』石持浅海氏(2013)

この国。 (光文社文庫) 石持氏はミステリー作家。 一党独裁の管理国家である“この国”は非戦平和を掲げることで経済成長を遂げた。死刑執行は娯楽となり、国民は小学校卒業時に将来が決められ、士官学校は公務員養成所と化し、政府が売春宿を管理する。そんな…

ディストピアの意味を知っていますか?~『この国。』石持浅海氏(2013)

この国。 (光文社文庫) 石持氏はミステリー作家。 一党独裁の管理国家である“この国”は非戦平和を掲げることで経済成長を遂げた。死刑執行は娯楽となり、国民は小学校卒業時に将来が決められ、士官学校は公務員養成所と化し、政府が売春宿を管理する。そんな…

乾電池がいつ発明されたか知っていましたか?~『30の発明からよむ世界史』池内 了氏(2015)

30の発明からよむ世界史 (日経ビジネス人文庫) 池内氏監修、身の回りにある「モノ」にはすべて歴史があります。(2015) 乾電池はいつ生まれたか? 使い切りのものを一次電池、充電して繰り返し使えるものを二次電池といいます。カーバッテリーなどに使われる…

ラスコーの壁画と英フィナンシャルタイムの共通点は何か?~『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』田端信太郎氏(2012)

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 田端氏はマスメディアの内側のビジネスマン、メディアが毎日の隅々までを浸す「メディア爆発時代」。ビジネスの成否や、人生の質をも左右する、「メディア・リテラシー」(2012) 世界最古のメディアとは 私は最古の…

王には、国境も国土も国民もない~『紀末・戦争の構造―国際法知らずの日本人へ 』小室 直樹 氏(1997)

世紀末・戦争の構造―国際法知らずの日本人へ (徳間文庫―教養シリーズ) 小室直樹( 1932 - 2010、経済学者、評論家。 国家ができる前に、ヨーロッパは既に存在していた。このキリスト教共同体からいかにして、国家、資本主義、近代法、戦争が生まれたか。(1997…

「田舎の3年、京の3日」ということわざを知っていますか?~『アメリカ素描』司馬遼太郎(1986)

アメリカ素描 (新潮文庫) 司馬遼太郎著、普遍性があって便利で快適なものを生み出すのが文明であるとすれば、いまの地球上にはアメリカ以外にそういうモノやコト、もしくは思想を生みつづける地域はないのではないか。(1986年) 文明と文化 文明は「たれもが…

そもそも領土という概念とはどういうものなのか?~『戦争の条件』藤原 帰一氏(2013)

戦争の条件 (集英社新書) 藤原氏は国際政治の研究者、君主の世襲による国境が正当性を失ったあとのヨーロッパにおいて、国土の領有はどのように正当化されるのか。(108ページより) (2013) 各国政府の合意による領土~ロジック① 各国政府の合意によって支え…

ギリシャとトルコ、そしてウクライナから見えてくるもの~『世界史で学べ! 地政学』茂木 誠 氏(2015)

世界史で学べ! 地政学 茂木氏は予備校の世界史の講師、 地政学とは、地理的条件が政治に与える影響を説明する学問。もともとイギリス、ドイツ、アメリカなどで国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的として発展してきました。(2015) 世界史におけ…

発見、結びつけ、発明、に必要なこと、それは動きまわること~『ユダヤ人、世界と貨幣――一神教と経済の4000年史』ジャック・アタリ氏(2015)

ユダヤ人、世界と貨幣――一神教と経済の4000年史 ジャック・アタリ氏はフランスの政治経済の実務家であり思想家。ノマード”、すなわちユダヤ人たちは、人類史上、グローバリゼーションの先駆者である。数多くのユダヤ人たちは、なぜ、世界中で活躍できたのか?…

大和魂とJapan Coolをつなぐもの~『羊の歌―わが回想』加藤周一(1968)

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689) 加藤周一(1919 - 2008)は評論家、「現代日本人の平均に近い一人の人間がどういう条件の下にでき上ったか、例を自分にとって語ろう」と著者はいう。(1968年) 大和魂の語は本居宣長が提唱した「漢意(からごころ)」と対…

どうしてケニアの陸上長距離選手は強いのか?~『人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか』川島 浩平氏(2012)

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書) 川島氏はアメリカ文化の研究家、オリンピックの陸上男子100m決勝で、スタートラインに立った選手56人は、ここ30年すべて黒人である。彼らは他の「人種」に比べ、本当に身体能力が優れているの…

サハラ砂漠、難民キャンプ、マラソン、すべてが非日常~『世にも奇妙なマラソン大会』髙野 秀行 氏(2010)

世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫) 髙野氏はノンフィクション作家、 サハラ砂漠でマラソン!? ある深夜、ネットでサハラ・マラソンなるサイトを見つけた著者。酔った勢いで主催者に参加希望のメールを送ったところ、あっさりと参加を認める返信がきた。(…

肥満は伝染するか?~『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』N・A・クリスタキス氏&J・H・ファウラー氏(2010)

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 クリスタキス氏は医学博士、フィラー氏は政治学の研究家。 肥満も性感染症も笑 いもすべて伝染する!?が提示する、クラウド時代の社会的ネットワークの姿。 (2010) 不幸な人びとと幸福な人びとは別々のグループに固…

肥満は伝染するか?~『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』N・A・クリスタキス氏&J・H・ファウラー氏(2010)

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 クリスタキス氏は医学博士、フィラー氏は政治学の研究家。 肥満も性感染症も笑 いもすべて伝染する!?が提示する、クラウド時代の社会的ネットワークの姿。 (2010) 不幸な人びとと幸福な人びとは別々のグループに固…

不安になることにも理由がある~『不愉快なことには理由がある』橘 玲 氏(2012)

不愉快なことには理由がある 橘氏は作家、脳科学や遺伝学、行動経済学、ゲーム理論などの学問と融合し、急速に発展した現代の「進化論」。(2012) 思い悩むシミュレーションが心の本質 進化心理学では、キリンの首が長くなるような身体的特徴だけでなく、人間…

怒ること、行動すること、93歳のレジスタンス戦士のメッセージ~『怒れ!憤れ!』 ステファン・エセル(2011)

怒れ! 憤れ! 若者よ、無関心はいけない。怒りを持って行動せよ。欧米の怒れる人々に火をつけたといわれている活動家の回想記。(2011 ) ステファン・エセル (仏1917 – 2013年) 外交官、大使、作家、強制収容所生還者、フランス・レジスタンスメンバー。 後年…

疑似科学とは愉しむ為のエンターテイメントだということ~『疑似科学入門』池内 了 氏(2008)

疑似科学入門 (岩波新書) 池内氏は宇宙物理学、占い、超能力、怪しい健康食品など、社会にまかり通る疑似科学などがなぜ無くならないのか?(2008) アメリカ最大の疑似科学 アメリカの特徴の第一は、キリスト教原理主義の勢力が強大で、科学的真理より聖書の記…

税金を負担せず公共サービスを享受しているのは誰か?~『タックス・イーター 消えていく税金』滋賀 櫻 氏(2014)

タックス・イーター――消えていく税金 (岩波新書) 志賀氏は元大蔵官僚、タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)と本書タックス・イーター(2014)で、自身の経験に裏打ちされた国際金融、国際税務について説明。 仕組みは複雑だが、やっている事は単…

老年の定義はいつ、どうやって決めたか知っていますか?~『日本の地価が3分の1になる!2020年 東京オリンピック後の危機』三浦 展 氏(2014)

日本の地価が3分の1になる! 2020年 東京オリンピック後の危機 (光文社新書) 三浦氏は社会デザイン研究家、生産年齢人口(15~64歳)が減り、経済も下向き、住宅地価格も下がる。(2014) 現役世代は年間100万人減っていく 15~64歳の「生産年齢人口」(つまり、働…

歴史人口学、家族人類学の視点から見たヨーロッパ~『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる ~日本人への警告』エマニュエル・トッド氏(2015)

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書) トッド氏はフランスの歴史人口学、家族人類学の研究家。冷戦終結と欧州統合が生み出した「ドイツ帝国」。EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している。(201…

我々はどうしてアジアという概念を持つに至ったのか?~『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』梅村 直之 氏(2005)

ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る (光文社新書) 梅森氏は日本政治思想史の研究家、ナショナリズム研究の最重要書のひとつである『想像の共同体』を著したベネディクト・アンダーソン。彼が二〇〇五年、早稲田大学で行った二つの講義を…

"環境にやさしい"に隠された本当の意味何か?~『現代思想としての環境問題、脳と遺伝子の共生』佐倉 統 氏(1992)

現代思想としての環境問題―脳と遺伝子の共生 (中公新書) 佐倉氏は進化生物学の研究家、環境問題とは情報の肥大化した文化によって人間が危機に立っていることを意味するとして、コンピュータに希望を見る。(1992) 環境問題とは何か? 環境問題複合体における…