私が新入社員に戻れたらここから始めたい~『最強のNo.2 会社と社会で突き抜ける最強のNo.2を極めろ!』
最強のNo.2 会社と社会で突き抜ける最強のNo.2を極めろ! U25 Survival Manual Series
人事の視点から見た、“普通のサラリーマン”が会社の中で成長し続け、社会で突き抜ける“プロフェッショナルな人材”になる方法。(2013)
組織のために、自分がなすべきことは何か?
会社で突き抜ける人は、自分に対して問いを持っている。
「組織の中で自分は何を成果として出すべきか?」
組織貢献、つまり成果に集中するための問いを自分の中に持ってる人は会社で活躍する。・・・「自分は何をしたいか」ではなく、「自分は組織のおいて何をなすべきか」。視点が自分ではなく、自分と会社に向いているほうが周囲からの応援を得ることができるし、会社が成功すればその分自分に返ってくるものも大きくなる。・・・自分を前に進める組織視点の問いを持つ。(24ページ)
新入社員がやるべきこと
私は、新入社員には「会いたい社員を3人リストアップしてランチに行け」と言っている。3人あえが少なくとも1人は相性の合う人がいるはずなので、その人に「困ったときの相談相手になってください」とお願いする。それを繰り返して、社内に3人は相談できる相手をつくる。・・・その3人は、直属の上司でもなく、同僚でもなく、社内だけど仕事に直接利害関係のない、斜め上の先輩がベスト。・・・ダメ出しと問いかけで刺激をくれる人を社内で見つける。・・・かっこいいと思える人、大きな志を持っている人、未来を語れる人。目線が高い人とつきあえば、ポジティブが伝染し、自分の目線も自然と高くなる。(78ページ)
最強のNo2になる
会社と社会で突き抜けるために、自分の覚悟を決める。
狙うのは、組織の成長を支える「最強のNo.2」。・・・社長であってもなくても、上司であってもなくてもいい。まずは会社の中で、共感と尊敬ができる人を見つけ、肩書き上ではない、自分にとってのNo1を決める。そして、とことんついていく。考え方を理解し、行動でアウトプットし、成果で評価を得る。会社においては、ひとりで突っ走るよりは、誰かにとって必要不可欠な存在になったほうが強い。結果的に会社、そして社会にとっても、なくてはならない存在になる。「最強のNo2」になれ。(82ページ)
会社と社会で突き抜ける最強のNo2を極めろ
曽山氏はサイバーエージェントの人事担当取締役。本書は人事担当役員という立場から、25歳以下のいわば新入社員に送るメッセージ。
曽山氏は設立間もないサイバーエージェントに入社、藤田社長のNo2になることを意識して活躍、成果を上げた経歴を持つ。No2と言う表現が使われているがそれは組織で2番目に偉いポジション、という意味ではない。事実組織上藤田社長と曽山氏の間にはCOOなどのポジションの人間がいる。曽山氏の言うNo2という意味は「誰かにとって必要不可欠な存在になる」ということである。サイバーエージェントの様にわずか20名の会社であれば社長との距離も近いであろう。それでは1,000名、10、000名の会社で社長といっても新入社員にとっては距離があり過ぎる。曽山氏は置かれた環境の中で、メンバー、上司、経営者などにとって必要な人材=No2になることと説く。
組織には必ず目的がある。その目的と自分の間を結んだとき、必ず人が存在する。その人の為に、組織の目標のために考え行動することが自分にとって果たすべき役割ということになる。
曽山氏は新入社員に先輩とランチに行け、と勧める。直接の上司ではない斜め上の先輩との関係を構築することで、組織の頂点と自分との距離がより正確に把握できる。私が新入社員に戻ったらここから出発したい。
蛇足
組織の目標を作るのはリーダー
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写実絵画は科学として始まった~『 一六世紀文化革命』山本義隆氏
山本氏は科学史の研究家、16世紀、活版印刷は教会によるキリスト教の独占を打破した。そしてそれは他の業界にも広がっていった。(2007)
16世紀文化革命
中世における科学と技術の断絶状況を打ち破ったのは、芸術家や職人・技術者そして外科医、さらには町の算数教室の教師や船乗りたちの学問世界への越境であった。彼らは俗語による執筆活動をとおして、ラテン語により守られていた大学アカデミズムによる知の独占に風穴をあけていったが、それは・・・新しい知のあり方を示すものであった。すなわち、彼らは自分たちの技術の秘密を文書化して公開し、それまで蔑まれてきた手作業・機械的技芸の価値を明らかにしただけではない。そこで逢着した諸問題にたいして合理的な考察を加え、そのことによって、実験的観察と定量的測定こそが自然研究の基本的方針であるべきことを主張し・・・経験重視の科学の重要性と有効性を明らかにしていったのである(2巻あとがき731ページ)
中世絵画
そもそもが中世キリスト教社会では、世界のさまざまな事物は信仰篤き者にたいして神が送ったメッセージであり、目に見える事物は象徴としての意味しかもっていない。それゆえ現実世界に対しては、そこに隠されている意味の探求にもが求められたのであって、世界の忠実な描写という意味での写実を促すものは、もともとなかった。・・・描写されるべき対象は自然物ではなく、言うなれば魂のイメージであり、人物や事物の大小関係や空間的関係はもっぱら抽象的ないし寓話的な意味で決められていた。(42ページ)
芸術家にはじまる
アカデミズムと無縁に育った職人が、おのれの仕事を理論化し自前の言語で公表するという16世紀文化革命は、もともとはこのように職人として蔑まれていた画家や彫刻家に始まる。・・・当時の先進的な美術家は、絵画や建築に学的根拠を与えることで二つの文化の越境を企て、文化のこの二重構造を打破しようと努力したのである。それは彼らがギルドの覇束を脱して自立した芸術家としておのれを確立してゆく過程とパラレルに進められた。(34ページ)
アルブレヒト・デューラー( 1471- 1528)は、ドイツのルネサンス期の画家、版画家、数学者。(Wiki)
デューラーが出版した絵画技術の説明
デューラー自画像
16世紀文化革命
山本氏は華々しい17世紀の科学革命の前の世紀に注目する。それまでの中世社会においては知識はある特定の集団に独占されていた。キリスト教はカトリック教会によって、学問は大学によって、建築家や画家などの職人はギルドによって独占されていた。グーテンベルグの印刷機によってカトリック教会の独占が崩れたことは良く知られているが、他の業界においても知識の一般化が行われていた。山本氏は本書で、画家、医学、鉱山、商業数学、機械、天文学・地理学などについて説明するが、その冒頭が画家である。
絵画はキリスト教秩序のイメージを具体化させるものであり、正確な写実の必要が無かった。これらを脱し、1点から眺めた可視的世界を描こうとしたとき、それは科学であり数学であった。絵画は正確に可視的世界を写しとる科学として始まったのである。いわゆる透過遠近法により絵画はより正確な情報を伝達することとなり、この絵画技法は書籍にまとめられ情報を拡散させた。書籍の挿絵には遠近法の技法が図示されていた。更に、写実的な絵画技法は医学や天文学などあらゆる分野の書籍に挿絵として活用され情報の拡散を加速させていた。
16世紀文化革命は知の独占を打破し、それが17世紀の科学革命に繋がっていた。
蛇足
写実絵画は科学だった
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TVキャスターが言葉にこだわる理由~『 キャスターという仕事』国谷裕子氏(2017)
日本のジャーナリズムに新しい風を吹き込んだ“クローズアップ現代”。真摯に、そして果敢に、自分の言葉で世に問いかけ続けてきたキャスターが、二三年にわたる挑戦の日々を語る。(2017)
(クローズアップ現代は)VTRリポート、スタジオゲスト、キャスターという三角形で番組を構成するというのが番組の手法だった。目に見えることを現場でVTRに収め、ゲストの見識で立体的に見せ、キャスターである私が視聴者の立場や、ときには同じ専門家でも異なる見解を持つ人の意見をぶつけるという形なのだ。・・・ゲストトークやキャスターコメントを重視した「言葉を大切にする番組」という狙いが、この構成には込められていた。(67ページ)
キャスターとしての準備
週4日の放送ということもあって、私は記者やディレクターのように現場の取材はなかなかできない。このため、様々な資料に当たることで、そのテーマについて自分自身に納得が得られるように、かなりの勉強と準備をした。毎週、木曜日の番組終了後、私は、両手に翌週放送分の資料やVTRをいっぱい詰まった紙袋を持って自宅に帰っていた。(68ページ)
テレビの難しさ
テレビはパワーがあるだけに、一瞬にしてあることを見せてしまう。そこには感情の共有化を促す、一体感を作り出すパワーがある。・・・だからこそ、より多くの視聴者を獲得するために、その力を総動員しがちだ。その一体感が支配するなかで、少数派の意見、異質な意見を伝えるのはとても難しい。(19ページ)
言葉の力
現代社会の複雑な断面を取り上げる〈クローズアップ現代〉のキャスターにとって、社会のなかで起きている新しい出来事を新しい言葉により定義して使用したり、使い慣れた言葉に新しい意味を与えることで、多様化している視聴者に共通の認識の場を提供していくことは、重要でとても大切な役割だ。(72ページ)
言葉の力~ウーマノミクス
2010年から、〈クローズアップ現代〉では、女性の働き方についてかなり意図的に取り上げ、2011年1月11日、新年最初の放送は、73分に拡大した「ウーマノミクスが日本を変える」という番組だった。・・・女性が男性とともに同じように活躍できるようになれば、経済の競争力も高まり、経済成長も期待できるということを端的に表す言葉だ。(73ページ)
言葉の力~ねじれ国会
数年前、「ねじれ国会」という言葉がメディアで頻繁に使われていた。・・・問題なのは、「ねじれ」という言葉が、やはりある文脈のなかに置かれれば、この事態がなにか正常でない事態、是正すべき事態を意味する言葉として流通してしまうことなのだ。・・・「ねじれ」状態を解消することが正常化すること、つまり衆議院と同じ政党が多数派になることが「正常」であるとの見方を流通させることにつながったとは言えないだろうか。(103ページ)
キャスターという仕事
テレビは映像を中心に組み立てられる。テレビは強力であるが故に現状を強化していく。それではテレビに映らない、映像にならない世界をどうやって伝達していくのか?それは新しい概念であり、現状では語られることのできないこと、これらは映像ではなく言葉によってでしか伝えられない。
国谷氏は映像、ゲスト、そしてキャスターという3つの要素を23年間勤めてきた。キャスターを務めるにあたって、国谷氏は様々な資料を読み込み全体を俯瞰しようと努力をした。キャスターというプロフェッショナルの奥行を教えてくれた。
蛇足
キャスターは和製英語、英語ではアンカー
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現代の旅人から、30世紀の旅人へのメッセージ~『ブルーウォーター・ストーリー―たった一人、ヨットで南極に挑んだ日本人』片岡佳哉死(2015)
ブルーウォーター・ストーリー―たった一人、ヨットで南極に挑んだ日本人
全長7.5メートルという小さなヨットで 、命がけの航海をしていた若者がいた。(2015)
未知の惑星を旅する
1年のうち330日が雨降りという、チリ多島海の中部地域。島々は不気味な濃い紫色にぬれ、奇怪な岩肌をさらし、暗い雨雲の下に続く。焼けただれたように陰惨な斜面、腫瘍のような醜い突起に覆われた山もある。過酷な風雨に浸食された、草も木もない丸裸の虚団な岩からは、命のひとかけらこ感じない。そこはあたかも魔物のすみか。ぞっとするような死の世界。・・・大昔、海底が隆起してアンデスの山々ができた。それらの谷間は氷河に深く浸蝕され、後に海水で埋まり、無数の頂上が島々になった。その水面を、ヨットに乗って旅している。飛行機で山脈を飛ぶようだ。いや、未知の惑星に来ているようだ。(71ページ)
現代社会がすべてではない
ひとりきりで自然の美しさと厳しさの中に生きる間に、感覚がしだいに研ぎ澄まされ、狭い町の常識が地球の常識ではないことを、体の全ての部分で直観したせいかもしれません。人工物のない太洋の真ん中を走りながら、強烈なオレンジに燃える太陽や、海面を銀色に光って吹く風が、はるかなる太古からあると実感したとき、我々の住む現代社会の常識が、40数億年も続く地球の常識ではないことを、心で直接理解したのかもしれません。(219ページ)
裏表紙より
この小さな物語は(実際の出来事なのですが)、30世紀かそれ以降のような遠い未来の人達にも、ぜひ読んでもらいたいものです。というのも、人類と呼ばれる生き物の群れは、青い水の星を飛び出して、宇宙という果てしのない海を、おそらく旅することになるからです。宇宙船に住み、あるいは遠い天体に生れて暮らす、数多くの子供と親たちは、はるかな遠い祖先の星、地球に思いをはせることでしょう。そんな彼らに、この星の7割を覆う海の上が、どんなに驚きと美しさにあふれ、どれほどの感動に満ちているのか、どうしても分かってほしいのです。
片岡氏は全長7.5メートルという小さなヨットで 、命がけの航海をした。太平洋横断、パタゴニアのマゼラン海峡、魔のホーン岬、ついには南極まで決死の単独航海を行っていた。
どうして片岡氏は小さなヨットで南極に挑む必要があったのであろうか?地球の美しさを実感するためである。考えてみれば人類は常に必要のない旅を続けて今に至った。片岡氏が旅をしたのと同様、そこにはさしたる理由は無かった。
なにげなくカバーを外すとそこにはメッセージが書かれていた。30世紀の未来の人達へのメッセージである。片岡氏は30世紀には人類は住み慣れた地球を離れ宇宙を旅していると考える。宇宙に打って出る必然性はあるか?人類はただ美しい宇宙を見てみたい、未知の領域に行ってみたい、という思いから旅をしているはずである。片岡氏の思いをしっかり受け止めました。
蛇足
片岡氏の挑戦は1980年から1990年、本書の出版が2015年、出版が遅れた経緯は詳らかではない。出版社は『海の恐怖」というトラウマから二十数年かけて解放された』とだけ説明する。
蛇足の蛇足
人類は旅する生き物
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牛丼に肉と玉ねぎしか入っていない訳~『吉野家 ~もっと挑戦しろ! もっと恥をかけ!』安部修仁氏(2016)
吉野家人生45年余りの安部会長の挑戦し、乗り越える人生、そして安部会長がオヤジと慕った松田氏をはじめとする先人の教えを吉野家のDNAとして今に、そして未来に引き継ごうとする安部会長の強い意志がこめられています。(2016)
客数主義、来店頻度主義
値段を上げて売上を増やすのではなく、お客さんの数を増やす。それには、リピーターの来店頻度を増やすこと。これは、今でも吉野家の根幹のポリシーになっています。・・・朝5時の開店と同時にお客様が殺到し、ピークタイムは立ち食い状態で、13時の閉店近くまで繁盛して(1965年には年商)1億円を達成します。わずか6~7分おきにお客様が入れ替わった計算になります。(48ページ)
高い回転率の源泉~すき焼き丼から牛丼へ
(それまでは)牛肉のほかに糸こんにゃくとか長ねぎ、たけのも、それに豆腐などが入っていました。
そこで、(実質創業者の)松田さんは考えたんですね。「いったい、お客様は何が食べたいんだろう?」と。答えが出ます。
「それは牛肉だ。それに加えるものがあるとすてば、玉ねぎだろう。なぜ、玉ねぎか。それは、玉ねぎの汁で甘みを出せるからだ。
牛肉と玉ねぎだけを残して、あとの具材はカットする。これで調理の手間が省け、その分早く牛丼を出すことができます。(50ページ)
年商2億円にするには?
牛丼だけの単品で、「年商1億円」という目標を達成した松田さんは、次の目標が浮かんでこなかった。・・・(チェーンストアコンサルタントの)渥美先生の「年商3億円突破」ゼミナールに参加し、「どうしたら年商2億、3億の店にできるか」を相談したんですね。すると、「1店で年商1億円、それを2億円にするなら、2店にすればいいじゃないか」と言われ、「あの時、震えるような感動があった。目から鱗が落ちた」と言っていました。今聞けば噴き出すほど滑稽な逸話ですが。(53ページ)
吉野家~もっと挑戦しろ!もっと恥をかけ!
吉野家の基本コンセプトは「はやい、やすい、うまい」。はやい、やすいを突き詰めていった結果誕生したのが牛丼というメニューだった。それに尋常ではないスピードで牛丼をサーブする。20席の店で1日1000食、年商1億円を達成する。その後多店舗展開を図るがそこで“やすい”が加わり吉野家の基本コンセプトが出来上がる。
経営とは与えられた環境という制約の中で何をやらないか?を考え、やれることに磨きをかけることだと改めて実感する。
安部氏は1992年から2014年まで創業者の後を引き継ぎ吉野家の社長を務め“ミスター牛丼”と呼ばれる。この間の大事件として、①倒産・再建(1980年)、②並盛250円セール(2001年)、③米国産牛肉輸入禁止(2003年)を上げる。外食という消費者関連のビジネス故、みな知られていた事件ではある。改めて考えてみるとどれも会社存続の危機に至る事態であった。それを吉野家は乗り切り、更なる成長の糧としていった。それは“与えられた環境という制約の中で何をやらないか?”という吉野家の原点に常に立ち戻ったからであろう。牛丼の引き算の美学は経営戦略の引き算の美学の原点であった。
蛇足
牛丼のネーミングは吉野家が作った。
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世界的な仕事は小さなチームでも実現できる!~『小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード 』Jフリード氏×Dハンソン氏(2016)
小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード (ハヤカワ文庫NF)
大きな仕事は小さなチームでも実現できる。(2016)
小さなチームの成し遂げたこと
僕たちは会社を大きくせずに、小さな企業やグループが楽に仕事できるようなソフトウェアを開発している。世界中で300万人以上の人たちが僕たちの製品を使っている。3人だけのウェブデザインのコンサルティング会社として1999円にスタートした僕たちは、2004年に、業界で使われているプロジェクト管理ソフトに不満を感じて「ベースキャンプ」を作った。・・・5年後、ベースキャンプは年間数百万ドルの利益をあげるようになった。(10ページ)
世界にささやかな貢献をする
大きな仕事をするには、何かを良くしているという感覚が必要だ。世界にささやかに貢献している、あなたは重要なものの一部である、という感覚だ。・・・自分の努力に価値があると感じる必要があるということだ。
これは緊急の課題である。時間は永遠ではない。これは人生の仕事なのだ。どこにでもあるような製品をもう一つ作りたいのか、それとも革命を起こしたいのか。・・・違いを生み出すには大きなチームが必要だと思い込んではいけない。・・・何かをするなら重要なことをしよう。・・・あなたも自分の業界で同じことができる。(36ページ)
小さな決断をする
小さな決断なら、変更の余地がある。失敗しても大きなペナルティはない。ただそれを修正するだけだ。
小さな決断をするということは、大きな計画を立てたり、大きなアイデアを考えたりできないということではない。大きなことを達成する最善の道は、一度に一つの小さな決断をすることだと信じることなのだ。大きくて遠いゴールと壮大な実行計画の問題は、モチベーションを殺してしまうということだ。それはあなたを失敗に導く。
極地探検家のベン・ソーンダスは彼の単独の北極探検(約2000キロを72日間ひとりで)の間、「大きな決断」については考えてみるのもゾッとするほどで、日々「目の前の数メートルの小さな氷にたどり着くこと」だけを考えていたという。
このような達成可能なゴールは一番いいゴールだ。実際あなたが達成し、積み上げていくことができるゴールである。「やり遂げた。完了!」と言えるところまでたどり着いたら次へ進むのだ。(130ページ)
ひらめきの賞味期限は今
何かしたいことがあれば、今しなければならない。しばらく放っておいて2か月後に取かかかるというわけにはいかない。・・・もし金曜日にひらめいたら、土日を返上してプロジェクトに専念するのだ。インスパイアされている間は24時間で2週間分の仕事ができるものだ。・・・生産性を高め、やる気をあおる。だが、待っていてはくれない。ひらめきとは「今」のものだ。(259ページ)
小さなチーム、大きな仕事~働き方の新スタンダード
本書を一言で言えば小さなチームでも大きな仕事はできる、ということ。それには大きな仕事を小さく分け、一つ一つを積み上げていくことである。本書の著者の二人はプロジェクト管理ソフト「ベースキャンプ」で300万人のユーザーを獲得した。社員の数は(執筆当時)十数名。彼らのビジネスがwebサービスだから十数名が適切な規模なのである。ビジネスの内容によってはもっと多くの人数が最適規模ということも考えられる。
重要な点は、世界の人々に製品を届け、顧客に喜んで貰おうと考えた、ということである。メッセージはシンプルである。
“何かをするのなら重要なことをしよう。あなたが価値あり、と感じることに取り組もう“
蛇足
始めるのは今、
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今更ながら、Googleは知識に価格メカニズムを導入していた~『知の進化論 百科全書・グーグル・人工知能』野口悠紀雄氏(2017)
知識と情報の拡散は、この世界のあり方をどのように変えてきたか?
インターネットは検索できる
グーグルの方法は、そのページにリンクするサイトの数によってページを評価するものです。・・・引用文献の数によって論文を評価することは、大学院生にとってはごく自然な発想です。「みんなの意見」によって順位を決めるという方法民主主義的な発想だということもできるでしょう。(120ページ)
ウェブサイトを検索して概念の意味を見出す場合には、知識の体系に関わりなく、直接に目的に到達できます。・・・「部分から全体へ」という百科事典的な知識の獲得法は、ウェブの時代になって本質的に重要なものとなりました。(131ページ)
「みんなの意見」~分散的・分権的への信頼
経済学者は、決定が分散的・分権的になされるシステムに強い信頼を寄せています。・・・この考えの厳密な理論的基礎は、経済学者のフリードリヒ・フォン・ハイエクが1945年に発表した論文The Use of Knowledge in Society(社会における情報の利用)において示されました。
ハイエクによる理論的説明
ハイエクによれば、人々は特定の場所、職種、経験などに基づく個別の知識を持っており、したがって、問題に近い場所にいる人ほど優れたソリューションを持っているはずです。つまり決定は分散的になった方が良いのです。
分散性が抱える問題はシステムの一部が発見した貴重な情報が、必ずしもシステム全体に伝わらない点にあります。そこで必要なのは、個人がローカルな知識を元にして決定を行い、それらを集合全体に組み込めるようにすることです。市場メカニズムは、「価格」という手段を使って、これを実現しているのです。(127ページ)
知の進化論~百科事典・グーグル・人口知能
野口氏は分散的・分権的な制度への信頼性を簡素に説明する。ハイエクを引用し簡素に説明する。分散的・分権的なシステムの弱点を価格情報が補っている。逆に言えば市場メカニズムだけで分散的・分権的なシステムが無ければ機能しない。
考えてみればgoogleの検索システムもまったく同様のシステムで動いている。引用される数が多いほど重要なサイトである、という情報の価値ルールを定めインターネット全体をこの価値ルール=市場メカニズムによって評価している。
Googleという検索システムはインターネット全体に市場メカニズム=価格を持ち込んだ。だからこそ部分と全体が、取りあえずは調和している。検索エンジンの欠点や問題点を指摘するのは容易い。それは市場メカニズムの欠点や問題点とある意味共通している。Googleは書籍、地図、画像などどんどん検索が及ぶ範囲を広げている。これもまた経済において市場メカニズムの及ぶ範囲が拡大していることと同じ文脈で理解できる。
Googleは情報に価格を付けていた。それにより情報の伝達スピードが飛躍的に向上した。
蛇足
市場メカニズムの失敗、独占とバブル
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